抄録
腸管の機能性通過障害を呈し,その原因が回腸のsegmental aganglionosisと考えられる1例を経験したので報告する.
症例は13歳の男性で嘔吐,下痢,腹痛にて入院,経過中も腹痛の増強,軽快を繰り返した.回腸の狭窄性疾患の診断にて開腹し,狭窄部位中心に回腸部分切除術を施行した.術後経過は良好で元気に退院した.病理組織学的所見では,狭窄部位のaganglionosisを認め,Hirschsprung病様であった.しかし狭窄部以外は口側,肛門側ともに正常腸管であり,Hirschsprung病とは異なる回腸のsegmental aganglionosisの病態であった.現在,Hirschsprung病の発生に関してはCranio-caudal migration説が有力とされているが,我々の症例はこの説では説明のつかない希少な興味深い1例である.