日本臨床外科医学会雑誌
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甲状腺乳頭癌の血管侵襲について
特に遠隔転移に関する検討
呉 吉煥岩崎 博幸鈴木 章杉野 公則松本 昭彦
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1990 年 51 巻 11 号 p. 2359-2364

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抄録

甲状腺乳頭癌の遠隔転移とその臨床病理学的特徴を検討するため,原発巣の病理組織標本をUEA-I染色および第VIII因子染色を用いて血管侵襲を詳細に調べた.対象は横浜市立大学第1外科で手術を行った甲状腺乳頭癌116例である.血管侵襲陽性の判定規準として,1) 腫瘍塞栓,2) 血管内皮の破壊またはびらん,3) 血管内腔での浮遊とした.その結果,血管侵襲陽性例は遠隔転移例では20例中17例(85.0%),非遠隔転移例では96例中29例(30.2%)に血管侵襲が認められた(p<0.0001).更に遠隔転移例に血管侵襲の頻度も高かった.臨床的には,性,年齢,腫瘍径,局所浸潤の程度および頸部リンパ節転移には有意差を認めず,組織学的には構成成分では相関はなく,分化度では低分化癌に有意差を認めた(p<0.001).以上より,甲状腺乳頭癌の遠隔転移例では血管侵襲像と低分化癌が重要な因子であると考えられる.

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