1990 年 51 巻 11 号 p. 2371-2376
1964年から1987年までに経験した759例の食道癌のうち他臓器重複癌を合併した59例を対象に検討を加えた.重複癌の頻度は全体では7.8%であったが,前期(1969~1975)と後期(1976~1987)に分けると,3.7%から11.2%と3倍に増加していた.対象臓器は全期間でみると頭頸部領域と胃がほぼ同数であったが,胃が後期で減少していたのに対し,頭頸部が著しく増加していた.予後は主として食道癌の治療成績に左右されていた.頻度の増加と対象臓器の変化に伴い,後期では臓器の多様化も目立った.重複癌を持つ食道癌治療は今後さらに複雑化することが予想される.