日本臨床外科医学会雑誌
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悪性腫瘍浸潤に対する下大静脈合併切除例の臨床的検討
宮崎 勝海保 隆宇田川 郁夫越川 尚男飯沼 克博伊藤 博松本 潤磯野 敏夫鈴木 裕之小山 隆史下田 司増田 政久中川 康次奥井 勝二Yayoi KANNOFumio KIMURA
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1990 年 51 巻 11 号 p. 2405-2411

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抄録

下大静脈を侵す悪性腫瘍6例に対して下大静脈を合併切除し腫瘍摘除した.症例は5例が腎癌に下大静脈腫瘍栓を伴っており,他1例は腎静脈合流部付近から肝部下大静脈に及ぶ後腹膜の平滑筋肉腫であり,十二指腸および胆嚢壁へ直接浸潤を認め肝転移(単発性)も存在した.肝部下大静脈を侵す遠位の高さは全例肝静脈合流部以下であり下大静脈切除時の血行遮断は4例にTotal hepatic vasculer exclusionを行った.5例に右腎摘を行い左腎静脈を結紮切離し再建せず,左腎摘の1例では右腎静脈を再建した.術死はなく術後一過性の軽度の腎機能障害をみるが,直ちに回復した.下肢の浮腫,静脈血栓等も認めなかった.
以上より下大静脈を侵す悪性腫瘍に対し下大静脈と共に腫瘍を切除する際に下大静脈の侵されている高さに応じた血行遮断を用いる事が肝要であり,かつまた下大静脈切除後の同部の血行再建は必ずしも必要なものではないと考えられた.

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