1990 年 51 巻 12 号 p. 2641-2644
症例は,40歳のMarfan症候群の独身女性で,幼少時から漏斗胸を認め,2年前に解離性大動脈瘤(De Bakey I型)を発症し,Bentall手術を受け,以後スピロノラクトンを内服していた.今回,右乳房に対し定型的乳房切断術を施行した.病理組織診断は,リンパ球浸潤の著しい乳頭腺管癌でt2, n2, M0, stage IIIであった.本症例では,併存疾患から治療上の問題点として,診断から治療までの過程,術式選択,皮膚切除範囲,皮膚切開形状などがあげられ,またスビロノラクトンの長期内服との関連から発生因的にも興味が持たれた.