日本臨床外科医学会雑誌
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高齢者大腸癌手術症例の検討
risk factorと遠隔成績を中心に
関根 毅竹吉 泉須田 雍夫
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1990 年 51 巻 5 号 p. 904-911

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抄録

70歳以上の高齢者大腸癌手術症例122例について,risk factorと遠隔成績を中心に69歳以下の症例358例と対比,検討した.術前合併症では腫瘍によるイレウスは26.2%,全身性疾患としての高血圧症は41.0%で最も多く,ついで,心血管疾患は32.8%,糖尿病は18.0%,呼吸器疾患は9.8%にみられた.術前検査による術前全身状態では赤血球数350万以下,Hb 10.0g/dl以下は24.6%, 35.2%,クレアチニン・クリアランス70ml/min以下は58.2%で,いずれも69歳以下に比べて高率にみられた.肺機能検査では閉塞性障害は30.4%で69歳以下に比べて有意に高率であった.治癒切除耐術症例75例において,3年生存率,5年生存率は結腸癌では77.5%, 63.7%,直腸癌では54.6%, 50.7%で他病死を除くと前者では83.9%, 73.7%,後者では64.5%, 58.7%であり,69歳以下の生存率に近接し良好な生存率を示した.以上の成績から,risk factorとしての術前合併症,術前全身状態を把握するとともに,積極的に根治性を目指した手術,さらに術後の慎重な全身管理をはじめとする経過観察が重要であると思われた.

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