抄録
大腸癌の増加にともない大腸多発癌の報告も増加しているが,異時性大腸多発癌の頻度は同時性に比し低い.今回第1癌手術後それぞれ14年10カ月, 12年10カ月を経て発見された大腸多発癌の2症例を経験した.症例1は75歳男で直腸癌術後11年5カ月を経て胃角部小弯前後壁にIIb型早期癌が発見された.さらに直腸癌術後14年10カ月を経て腹痛,悪心,嘔吐を主訴として救急入院.イレウスの診断の下開腹手術を行い,横行結腸肝曲部に進行癌を認め結腸切除を行った.術後1年3カ月を経て肝転移再発にて死亡した.症例2は66歳女で,直腸(Rs)癌術後12年10カ月を経て,腹痛,貧血を主訴として来院.逆行性大腸透視にて横行結腸肝曲部に進行癌を認め大腸切除を行った.術後2年3カ月の現在再発の所見なく健在である.以上比較的まれな大腸第1癌術後10年以上を経て発見された異時性大腸癌の2症例を経験したので若干の文献的考察を加え報告した.