1991 年 52 巻 12 号 p. 2940-2943
胃ポリープを発生母地とした残胃早期癌を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.症例は82歳男性. 15年前に早期胃癌の診断にて胃亜全摘術, Billroth I法を受けた既往がある.今回直腸癌の手術目的で入院.上部消化管造影・胃内視鏡にて残胃縫合部に一致して山田III型のポリープを認め,生検でGroup Vであった.残胃及び直腸の重複癌と診断し平成元年7月24日,残胃全摘術・低位前方切除術を施行した.切除標本の肉眼所見では残胃の縫合線上に22×20mmのポリープを認め,組織学的には管状腺腫で一部に管状腺管癌を伴っていた.
一部癌化を示した腺腫が残胃に見られる事は極めて稀であり,さらに直腸癌との重複癌であったため貴重な症例と考え報告した.