1991 年 52 巻 4 号 p. 903-907
慢性腎不全で血液透析を受けていた患者に合併した両側総腸骨・大腿動脈瘤の1例を経験したので報告した.症例は69歳男性で3カ月前から血液透析を受けていたが両側そけい部の拍動性腫瘤に気づき外科転科となった.理学的所見および画像診断(X線CTスキャン,超音波断層,動脈造影)により両側性に発生した総腸骨・大腿動脈瘤と診断された.全身麻酔下に腸骨動脈瘤は空置,大腿動脈瘤を切除した後,腹部大動脈・両側浅大腿動脈間Y字型人工血管移植術を行った.腹部大動脈および腸骨動脈の切離操作に切除断端自動縫合器TAを用いたところ手術侵襲の軽減に有効であった.術後経過は順調で術後28病日に退院した.