1991 年 52 巻 5 号 p. 1125-1130
von Recklinghausen病患者に発生した,非機能性褐色細胞腫と後腹膜悪性神経鞘腫の1切除例を報告する.症例は48歳女性で,祖母,母,妹にvon Recklinghausen病の発症がみられている.発熱,腹部腫瘤を主訴に来院し,全身にcafé au lait spotsと多数の神経線維腫が認められた.腹部US, CT検査,血管造影検査の結果,右副腎原発の直径13cmの腫瘍と,大動脈腹側の後腹膜に鶏卵大の腫瘍が存在していることが判明した.副腎腫瘍は感染により膿瘍化し,内分泌学的検索で非活性腫瘍であった.両腫瘍の切除術を施行した.右副腎腫瘍は13×15×13cm,重さ694g,中央は壊死に陥り赤褐色膿様液を入れていた.大動脈腹側の後腹膜腫瘍は5×5×3cm,黄色充実性であった.病理組織学的検索により前者は悪性褐色細胞腫,後者は悪性神経鞘腫であることが判明した.