1991 年 52 巻 9 号 p. 2061-2066
20歳女性で感冒様症状から起坐呼吸となり心エコーにて左房内腫瘍・心タンポナーデと診断されたため緊急手術を行った.肉眼的に悪性の所見を認めたので腫瘍の全切除と左房3/4・心房中隔1/2・右房1/2の合併切除を施行した.その結果ダクロンシートを用いた肺静脈再建を含む広範な心房再建が必要であった.組織学的には粘液肉腫の診断で,再建に伴う心機能低下や重症な不整脈は認めず術後経過は良好であった.術後2カ月で完全に社会復帰したが, 6カ月目に肺転移を認め化学療法にもかかわらず11カ月目に死亡した.心臓悪性腫瘍は臨床症状が著明になってから治療が開始されるため予後不良であるが,本症の様に全摘出によって一時的には完全に社会復帰可能なまで回復する場合もあるため有用な手術であると考え報告した.