日本臨床外科医学会雑誌
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潰瘍性大腸炎に合併した直腸癌および直腸カルチノイドの1例 -本邦報告例の集計と考察-
冨田 冨士夫高島 茂樹後藤田 治公加藤 真史斉藤 人志櫛引 健芦田 義尚木南 義男
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1991 年 52 巻 9 号 p. 2145-2150

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抄録

症例は38歳男性.粘血便を主訴に来院する. 21年間の潰瘍性大腸炎の治療歴を有し,注腸検査および大腸内視鏡検査にて,肛門縁より3cmの下部大腸に周囲との境界が不鮮明で扁平な隆起性病変がみられ,内腔は明らかに狭窄を呈していた.組織診にて直腸癌と診断し直腸切断術を施行した.切除標本の病理組織学的検査ではwell-moderate differetiated adenocarcinoma a1, IFNγ, ly2, v0, n1 (+), stage IIIであった.癌腫の周囲粘膜にはdysplasiaがみられ,さらに癌腫より8cm口側の粘膜下層に大きさ2mmのカルチノイドを認めた.潰瘍性大腸炎の長期経過例に対しては癌腫の合併のみならずカルチノイドをも念頭においた検索が肝要と考えられた.

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