1991 年 52 巻 9 号 p. 2173-2178
13歳,女児に発生した遊走脾茎捻転の1例を経験した.
腹痛・下痢・嘔吐を主訴に来院し,腹部エコー, CTで左下腹部に充実性腫瘤がみられ,血液検査では,軽度の貧血と炎症所見を示すとともに, CA125が465U/mlと上昇していた.卵巣腫瘍茎捻転の術前診断で手術を施行した.腫瘤は大網とS状結腸膜に線維素性に癒着した遊走脾で,脾固定靱帯は見られず,茎は360°時計方向に捻転していた.脾実質は出血性梗塞に陥っていると思われたので脾摘術を行った.摘出脾は大きさ19×10×5.5cm,重さ500gであった.術後経過は良好で第13病日に退院した.
本邦で報告されている遊走脾は自験例を含め64例で茎捻転を合併し外科的治療を要したのはこの内の38例59%であった.