1992 年 53 巻 9 号 p. 2243-2247
最近でも,マムシ咬傷後による多臓器不全や死亡症例の報告がある. 1989年8月にマムシ咬傷後,腫脹が著しく下肢から躯幹に及んだ68歳男性症例を保存的に治療した.回復しつつあり生存が期待できたが不幸にも13病日突然敗血症になり15病日に死亡した.減張切開をしていればもう少し続発症や合併症が少なかったと反省した.その後1年間に9例のマムシ咬傷があり,うち腫脹の著しい4症例に減張切開を施行した. 3例には続発症や合併症は無かった.減張切開直後より3例では腫脹は軽減し始めた.手を咬まれた1例は頸部,胸部まで腫れて呼吸抑制を起こした.減張切開した4症例中マムシ抗毒素血清を投与したのは1例のみであった.減張切開はマムシ毒による浮腫液摘出を容易に,ひいては二次的障害であるcompartment syndromeも防げる.上肢では上腕,下肢は大腿まで腫脹に及び,末梢側のしびれや,痛みが強い場合は減張切開を行うべきである.