日本臨床外科医学会雑誌
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潰瘍性大腸炎の病型別血管構築像の検討
下山 孝俊清水 輝久草野 裕幸中崎 隆行内川 徹也吉田 隆一郎吉田 一也吉田 彰山口 広之中越 享三浦 敏夫富田 正雄
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1993 年 54 巻 1 号 p. 23-30

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抄録

潰瘍性大腸炎の病態を知る目的で,手術摘出標本7例にmicroangiographyを行い,血管形態学的立場から検討した. 1) 潰瘍性大腸炎の腸壁各層の血管系は,基本的には粘膜,粘膜下血管の改築が主体で,筋層以下の基本的血管構築像は保たれていた.潰瘍底には血管系の集中像がみられない. 2) 炎症性ポリープは増殖性ポリープと島状残存ポリープに分類され,粘膜ひだに分布する貫通枝の支配が認められた. 3) pseudopolyposis typeは増殖性炎症性ポリープが主体であったのに対し, atrophic typeは腸壁肥厚を反映して粘膜血管網の欠乏と貫通枝の屈曲,蛇行,血管壁の狭小化がみられた. toxic megacolonは腸管壁は菲薄で,島状残存ポリープを認めた. 4) 腸壁血管の拡張,増生は潰瘍修復後も残存しており,再燃に関与するものと推察された.潰瘍性大腸炎は病因論的に,各々の病態に対応した血管構築像が認められ,病変の増悪,治癒に影響を与えているものと考えられた.

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