抄録
最近の5年間に経験した胃癌肝転移41症例,大腸癌肝転移60症例を比較検討し以下の知見を得た.(1)異時性胃癌肝転移症例の中には,実は遺残癌と言える症例をかなり含むと考えられた.(2)胃・大腸癌同時性肝転移症例に対して動注療法および肝切除術を行うことの意義は比較的少なかった.(3)胃・大腸癌異時性肝転移症例に対しての動注療法は有用で,とくに異時性大腸癌肝転移症例においては肝切除術に匹敵する良好な生存率を示した. (4)腫瘍マーカーの変動および腫瘍縮小率からの検討では,動注療法はいまだ満足できる結果とは言い難く,投与薬剤の種類・量および投与経路等,今後の課題と考えられた.(5)肝切除術後動注療法を併用し得た症例では長期生存が期待でき,残肝再発による直接死亡例は経験しておらず,肝切除後の動注療法の有用性を再確認したが,今後はさらに肺転移・腹膜再発などに対する配慮が必要と考えられた.