日本臨床外科医学会雑誌
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胃潰瘍瘢痕による噴門狭窄の1例
津嶋 秀史窪田 敬一有園 さおり中尾 健太郎太田 秀二郎照屋 正則梶浦 直章
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1993 年 54 巻 10 号 p. 2578-2582

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抄録

症例は78歳,女性.平成3年12月頃より食欲不振,嘔気,嘔吐出現.上部消化管造影にて下部食道の狭窄及び胃噴門部の腫瘤陰影を指摘され,精査,加療目的で入院となった.上部消化管内視鏡施行すると, ECJ部はピンホール状で,胃側への内視鏡の挿入は不可能であった. ECJ部の生検結果はGroup IIであった.腹部エコー及びCTで,肝左葉に直径約4cmの嚢胞が認められ,エコーガイド下に嚢胞内容を穿刺吸引すると,噴門部の腫瘤陰影はほぼ消失したため, ECJ部の良性狭窄及び肝嚢胞による胃の壁外性圧迫と診断し,平成4年3月11日,噴門側胃切除術を施行した.肉眼的には噴門部のkissingulcerと口側の白色の肥厚がみられた.病理組織学的には,粘膜下層の広範な線維化がみられ,胃潰瘍瘢痕による線維性狭窄と診断された.術後は順調に経過し,術後第46病日退院となった. ECJ部の胃潰瘍瘢痕が原因となったと思われる珍しい噴門狭窄の1例を経験したので報告した.

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