日本臨床外科医学会雑誌
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横行結腸間膜動脈瘤破裂後に下血をきたした1例
高橋 修下田 司新田 宙遠藤 幸夫中島 透
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1993 年 54 巻 12 号 p. 3099-3103

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抄録

症例は44歳男性.数日間にわたる下血を主訴に来院.入院時貧血なく,腹部超音波検査, CT検査で腹腔内液体貯留をともなう腫瘤を認めたが突然ショックとなり緊急手術となった.手術所見では腹腔内に多量の出血を認め横行結腸間膜の広範な血腫と後壁の奨膜の裂傷,この部に手挙大の凝血塊を認め血腫を含め横行結腸切除を施行した.横行結腸には発赤,びらんが散在し粘膜に炎症性細胞浸潤,杯細胞の減少,陰窩膿瘍,粘膜下層に浮腫を認め間膜の血腫ほぼ中央に破裂した動脈瘤が見られた.腸間膜動脈瘤は腹痛や消化管,腹腔内出血で気づかれることが多いが,この消化管出血は動脈瘤の消化管内への直接破裂によりひきおこされる.今回の症例は初診時に見られた下血が動脈瘤の腸間膜内破裂により形成された血腫で横行結腸に虚血性変化をおこしたことにより生じたと思われる稀な例であり,若干の文献的考察を加えて報告した.

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