日本臨床外科医学会雑誌
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乳癌穿刺吸引細胞診の有用性と限界
神崎 正夫中谷 雄三町田 浩道鳥羽山 滋生戸田 央小島 幸次郎小助川 克次清水 進一小林 寛
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1993 年 54 巻 3 号 p. 564-569

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抄録

1986年1月より1991年9月までに当院で手術した乳癌例で,術前に穿刺吸引細胞診 (ABC) を行った303例において, ABC診断偽陰性(疑陽性,陰性,判定不能)発生の腫瘍側因子を検索し,ABC診断の問題点を検討した.
ABC診断の成績は陽性82%,疑陽性12.3%,陰性1.4%,判定不能4.3%であった.腫瘤径2cm以下,非浸潤癌,組織学的悪性度,脂肪浸潤,脈管侵襲の5つの腫瘍側因子において陽性例と比較して疑陽性例の発生頻度が有意に高かった.つまり小腫瘤では技術的因子と腫瘍側因子とにより偽陰性が発生しやすいといえ,また腫瘤径に関係なく,組織学的悪性度,脂肪浸潤,脈管侵襲の腫瘍側因子によっても疑陽性が発生する可能性があることが示された.
この偽陰性率を低下させABC診断限界を補う工夫として,異型性の低い細胞の判定には油浸検鏡による核所見の観察が有用であり,またABCと超音波検査の組合わせが補助診断法として最も診断率が高いと思われた.

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