日本臨床外科医学会雑誌
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肝細胞癌切除症例における術前リピオドールCTの意義
大橋 一朗佐々木 洋今岡 真義柴田 高永野 浩昭桝谷 誠三甲 利幸石川 治亀山 雅男古河 洋岩永 剛藤田 真
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1993 年 54 巻 3 号 p. 622-626

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抄録

絶対非治癒切除を除く肝細胞癌切除例162例のうち術前画像診断としてLipiodol動注後CT(LpCT)を施行した群84例と施行しなかった群78例を対象として,術前LpCTの意義を検討した.術前LpCTにより多発病変の同定率が22%上昇した.多発病変に対するLpCTの敏感度は0.86, 特異度0.80であった.一方, LpCT以外の総合画像診断では敏感度は0.50, 特異度0.90であった. LpCTでは敏感度において有意に高い値を示した (p<0.05). 遠隔成績ではLpCTを施行した群は施行しなかった群に比し,無再発生存において良好な傾向を示した.この傾向は単発群間,多発群間の検討においても同様であった.特に多発群間の検討において, LpCT施行群の1年無再発生存率は非施行群のそれに比し有意に良好であった (p<0.05). 以上,術前LpCTの施行は術前の多発病巣の診断能を上昇させ,ひいては良好な肝切除後遠隔成績をもたらす可能性が示唆された.

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