日本臨床外科医学会雑誌
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切石術後の肝胆道シンチグラフィーにて胆汁排泄遅延を認めた肝内結石症の1例
岸本 秀雄大橋 大造入谷 勇夫小川 弘俊中村 従之大谷 亨織田 誠都築 尚生
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1993 年 54 巻 3 号 p. 730-734

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抄録

著明な胆汁排泄遅延を認めた肝内結石症に対し分流手術を施行し, 3年3ヵ月を経過した現在,再発の徴候を認めないので報告する.症例は50歳の男性. 1983年8月に,胆嚢,総胆管結石症にて胆嚢摘出,総胆管切開,乳頭括約筋形成術を施行した. 1988年10月,肝内結石症を認めた.経皮経肝胆道鏡下切石術後の肝胆道シングラフィーにて著明な胆汁排泄遅延を認めたため,高度の胆汁鬱滞を基盤とし,食物残渣や膵液の胆管内への逆流が誘因となって生じた肝内結石症と診断し, 1989年2月,総胆管空腸吻合術を施行した. 1992年4月のシンチグラフィーにて依然として著明な胆汁排泄遅延を認めるものの,結石の再発はない.高度の胆汁排泄遅延を呈する肝内結石症に対する胆道付加手術としては括約筋形成術は適応外であり,分流手術が第一選択であると考えられた.また切石術後の肝胆道シンチグラフィーは肝内結石症の治療方針を決定する上で有用であると思われた.

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