1993 年 54 巻 6 号 p. 1528-1531
腹部大動脈瘤の破裂でも比較的稀とされている動静脈瘻を経験したので報告する.症例は67歳男性で突然血尿が出現し他院受診,腹部大動脈瘤の診断にて当科紹介となった.入院後,心臓カテーテル検査にて高心拍出量と左総腸骨静脈での酸素飽和度の上昇,また,動脈造影検査にて左総腸骨動静脈痩が認められた.手術は左側よりのretroperitoneal approachにて行い,左大腿動脈よりForgaty balloon catheterを挿入,左総腸骨静脈を遮断した.瘻孔は径約0.5cm程度と小さかったが静脈遮断前には多量の出血を認めた.瘻孔を直接閉鎖し,瘤をY graft人工血管にて置換した.術後経過は良好で溶血も改善し元気に退院となった.本疾患の予後向上のためには早期診断,早期治療が重要であると思われた.