比較的稀な乳腺結核を経験したので報告する.症例は62歳女性.右乳房に直径3cmの腫瘤を自覚.近医受診し悪性疾患を疑われ当科紹介された.初診時乳房所見は右乳房C領域に30×15mm卵円形の腫瘤を触知.表面は凹凸不整で境界明瞭,腋窩リンパ節触知せず.血算,生化学検査では賄無し.ッ反15×18mmであったが,胸部X線写真に異常所見は認められなかった.マンモグラフィ,エコーも悪性を強く疑わせる所見であったため試験切除を施行した.組織診にて類上皮細胞, Langhans 巨細胞の出現を認め乳腺結核と診断された.術後ストレプトマイシン,イソニコチン酸ヒドラジド,リファンピシンを内服にて良好な経過をみた.
乳腺結核は癌との鑑別診断は極めて困難であり生検による組織診断,結核菌の証明が重要である.乳腺腫瘍で念頭に置くべき疾患の一つである.