1993 年 54 巻 7 号 p. 1876-1880
61歳,男性の胆嚢腺扁平上皮癌症例に対し肝中央2区域切除を含む胆嚢摘出術,リンパ節郭清 (R2), 右半結腸切除を行った症例を報告した.
患者は右季肋部に手拳大の腫瘤を指摘され超音波ならびにCT診断により胆嚢悪性腫瘍と診断された.切除標本では充実性の黄白色の腫瘍が胆嚢内に充満し直接,肝臓と横行結腸に浸潤していた.リンパ節は12aと8aに小指頭大の腫脹を認めた.組織学的には腺癌細胞の中に角化傾向,癌真珠の形成を伴った扁平上皮癌細胞の癌胞巣が混在し中分化型腺扁平上皮癌と診断された.術後経過は良好で10カ月後の現在,社会復帰している.
臨床病理学的に独特な特徴を持つ本症に対し主に扁平上皮癌の組織発生を中心に文献的考察を加え報告した.