日本臨床外科医学会雑誌
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肝奇形腫の1切除例
柚木 靖弘浜崎 啓介三村 久森 雅信津下 宏折田 薫三
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キーワード: 肝奇形腫, 成人例, 卵巣腫瘤
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1993 年 54 巻 8 号 p. 2144-2149

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抄録
肝に原発した奇形腫の1切除例を経験した.症例は46歳女性で,自覚症状は特になく,人間ドックの腹部エコーで発見された.入院時理学的所見・血液一般検査で異常を認めず,腫瘍マーカーも正常範囲内であった.各種画像診断で肝右葉に約6cm大の境界明瞭な腫瘤を認め,肝脂肪腫の術前診断で開腹した.病理組織診断で良性肝奇形腫と診断された.奇形腫は真性の腫瘤で, 3胚葉成分をすべて含むことが必須の条件とされる.肝に原発する奇形腫は極めてまれで,文献的に26例を認めるに過ぎない.発症年齢は二峰性を示し,小児例と成人例に分けられる.今回は成人例9例につきあわせて検討した.本症例は成人例中最高齢であった.性別では女性に多く,男女比は1:8であった.既往歴として卵巣の腫瘍性病変の手術歴が本例を含めて7例にみとめられ,その多くが胚細胞性腫瘤と考えられることは本症発生のメカニズムの解明に役立つものと思われた.
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© 日本臨床外科学会
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