1993 年 54 巻 9 号 p. 2276-2279
外科的に切除した食道顆粒細胞腫の1例を経験したので報告する.症例は37歳,男性で胃潰瘍の経過観察中,内視鏡検査でEi領域の食道後壁に7×3mm大,白色調で浅い陥凹を伴う立ち上がりのなだらかな隆起性病変を認めた.生検によりgranular cell tumorの診断が得られ,組織学的に悪性所見を認めなかったが,腫瘍の形態,年齢などを考慮し,開胸下に食道喫状切除術を行った.顆粒細胞腫は舌,皮膚,乳房などに好発するが,食道に発生することはまれであり,われわれの検索によると本邦では現在までに84例の報告がみられるにすぎない.本症は一般に良性腫瘍と考えられているが,悪性例の報告もあり,治療方針決定に際し注意が肝要である.