1994 年 55 巻 10 号 p. 2640-2644
症例は56歳,男性.発熱と背部痛を主訴として来院.入院時,軽度の貧血と胆道系酵素の軽度の上昇を認めた.また,白血球とγ-globulinは正常範囲であったが, CRPは3.6mg/dlと高値を示した.腹部CTで,肝尾状葉に5×4cmの低吸収域を認め,比較的造影効果のある腫瘤として描出された.腹部MRIでは, T1強調像では低強調域, T2強調像では高強調域を示した.下大静脈造影では,腫瘍による下大静脈の左側への弧状圧排を認めた.以上の所見より,肝悪性腫瘍を疑い,腫瘍摘出術を施行した.肉眼的に,腫瘍は周囲との境界明瞭な黄白色を呈し,内部に結石を有する微小膿瘍を伴っていた.組織学的には,膿瘍は類上皮細胞と巨細胞からなる肉芽腫で取り巻かれ,その周囲に組織球,リンパ球,形質細胞の浸潤と結合組織の増生を認め,肝inflammatory pseudotumorと診断された.