日本臨床外科医学会雑誌
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直腸早期癌の臨床病理学的検討と治療方針
柿沼 臣一関根 毅須田 雍夫上原 敏敬
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1994 年 55 巻 6 号 p. 1402-1407

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抄録

直腸早期癌,とくに下部直腸早期癌23例について臨床病理学的成績を検討し,治療方針について考察を加えた.直腸早期癌は直腸癌手術症例の9.5%で,このうち下部直腸早期癌は63.9%であった.肉眼型ではIIa, IIa+IIcが多く,組織型では高分化腺癌が82.6%と大部分を占めていた.リンパ節転移はm癌, sm癌のいずれでも認められなかった.脈管侵襲はm癌ではみられなかったが, sm癌では ly(+)は27.3%, v(+)は36.4%に認められ, sm浸潤度はすべてsm1c以上であった.以上の成績から,下部直腸早期癌と思われる症例には,できるだけポリープ摘除や局所切除術を施行し病理組織学的検索を行い, sm癌の根治手術の適応の決定には, sm浸潤度も指標となりうることが示唆された.今後さらに症例を重ね検討したい.

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