1994 年 55 巻 6 号 p. 1545-1549
最近われわれは,発症より22年目の全結腸炎型・潰瘍性大腸炎の直腸に小隆起性病変を認め癌化を疑い,手術を施行したところ,病理学的には壁深達度pm, リンパ節転移陽性で,術後8カ月めに異時性多発肝転移を認めた症例を経験した.
潰瘍性大腸炎に対する外科治療法の確立とともに,外科適応は拡大され,最近では難治性症例に対しても,早い時期に手術を行う傾向にある.この症例の経験から,癌化リスクを考慮すれば,いたずらに手術を遷延することなく,さらに早い時期での手術適応が検討されねばならない,と同時に,手術時期決定のための癌化survaillanceの重要性を強調した.