日本臨床外科医学会雑誌
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煎餅による食餌性イレウスの1治験例
瀬尾 泰雄有地 茂生
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キーワード: 食餌性イレウス, 煎餅
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1995 年 56 巻 3 号 p. 562-565

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抄録

煎餅による食餌性イレウスの1治験例を報告し,若干の文献的考察を加えた.
症例は61歳の男性,腹痛,腹部膨満感,おくびを訴えて来院した.腹部は膨隆し軽い圧痛を認めた.腹部単純X線検査では,多数のniveauを認め,超音波検査では,腸管は拡張し,Kerckring皺襞はkey board signを呈していた.開腹術の既往はなく,腹膜刺激症状もなく,イレウスの原因を限定できないが,食餌性イレウスの可能性を考慮し緊急手術を施行した.Bauhin弁より80cmの回腸に5.5×4.5cm大の異物塊が嵌頓しており,腸切開により異物を摘出した.異物は5.5×4.5×0.7cm大,扇状偏平な煎餅の一枚分の1/4片であった.術後,患者に問い正したところ,手術3日前に,咀嚼不十分なまま,お茶で流し込むように数枚摂取したとのことであった.
イレウス症例においては,詳細な食事内容,摂取状況の問診が重要と痛感した.煎餅による食餌性イレウスは本邦第1例目である.

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