日本臨床外科医学会雑誌
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腫瘍栓の門脈塞栓効果によって根治切除しえた肝細胞癌の1例
岩本 伸一佐々木 洋桝谷 誠三大橋 一朗岸本 慎一石川 治大東 弘明今岡 真義岩永 剛
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1995 年 56 巻 3 号 p. 600-604

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抄録

58歳,男性.肝炎にて経過観察中,腹部超音波検査にて肝SOLを指摘された.診断時S4, S5, S6に計3個の腫瘍を認めた.この時の岡本らの方法による予後得点は52点で根治的右3区域切除は困難と判断された.そこで肝動脈塞栓療法(TAE)を1989年6月, 1990年2月の2回施行したが,その後の経過中に右門脈一次分枝から本幹に腫瘍栓が形成された.腫瘍栓による右門脈閉塞のために右葉の萎縮,外側区域の代償性肥大が惹起され予後点数も33点に低下した.この時点で根治的右3区域切除可能と判断し, 1991年3月3回目のTAEを施行した上で診断後23カ月目に門脈合併切除を伴う右3区域切除施行した.術後経過は順調で3年5カ月経った現在も生存中である.根治切除しえた原因として, 1. 3個の腫瘍の多中心性発生, 2. TAEの抗腫瘍効果, 3.門脈一次分枝から本幹に及ぶ腫瘍栓による外側区域の代償性肥大, 4.腫瘍栓の自然壊死,が考えられた.

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