日本臨床外科医学会雑誌
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大腸多発癌の臨床病理学的検討
豊田 和広岡島 正純浅原 利正有田 道典小林 理一郎中原 雅浩正岡 良之小島 康知伊藤 敬藤高 嗣生川堀 勝史土肥 雪彦
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1995 年 56 巻 5 号 p. 920-926

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抄録

大腸癌は近年増加傾向にあり,多発癌症例も稀ではない.最近13年間に当科で経験した大腸多発癌31例(同時性27例,異時性3例,同時性かつ異時性1例)について,単発癌410例(対照)と比較検討した.病巣数は合計66病巣で,占居部位は直腸(42.4%), S状結腸(24.2%)に多く,その分布は対照とほぼ同様であった.組織学的壁深達度は同時性の第1癌では対照と同じくss(a1)が多かったが,第2癌ではm, smの早期癌を17例(58.6%)と多く認めた.組織型は同時性,異時性とも第1癌では中分化腺癌が多かったが,第2癌では高分化腺癌が多く認められた.多発癌症例において癌家族歴および大腸癌家族歴を有する頻度は高く,腺腫の合併頻度も高かった.根治度A症例の5年生存率は,多発癌51.3%,対照72.3%であり多発癌症例でやや不良であった.大腸癌においては多発癌を念頭においた術前,術中および術後の検索が重要と考えられた.

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