日本臨床外科医学会雑誌
Online ISSN : 2189-2075
Print ISSN : 0386-9776
ISSN-L : 0386-9776
十二指腸に浸潤した胆嚢扁平上皮癌の1例
上松 俊夫北村 宏岩瀬 正紀中村 光男山下 公裕小倉 廣之小栗 孟
著者情報
ジャーナル フリー

1996 年 57 巻 1 号 p. 159-163

詳細
抄録

十二指腸球部に浸潤し,その所属リンパ節であるNo.(5), No.(6)リンパ節にのみ転移を認めた胆嚢扁平上皮癌の1例を経験した.症例は腹痛を主訴とする73歳の女性で,穿刺吸引細胞診にて扁平上皮癌と診断された.肝膵同時切除術とリンパ節郭清(R3+ex)を施行した.腫瘍は最大径10cmの塊状型で,組織学的にすべて扁平上皮癌より成り, hinf3, s3(十二指腸), n4, bInf0, H0, P0, stage IVで,手術は相対非治癒切除であった.術後4カ月後に残肝再発にて死亡した.
胆嚢の扁平上皮癌は,膨張性発育が特徴で,リンパ節転移もまれと言われている.しかし自験例のように他臓器に浸潤した場合,その所属リンパ節転移にも注意し十分な郭清をすべきであると思われた.一方,肝切除の範囲に関しては,報告例の検索でも意見の一致を認めず,長期生存を得るためには今後の検討を要するものと考える.

著者関連情報
© 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top