日本臨床外科医学会雑誌
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腹腔鏡下胆嚢摘出術時の落下結石が原因で難治性の右横隔膜下膿瘍を形成した1例
袖山 治嗣花崎 和弘宮澤 正久新宮 聖士清水 忠博横山 史朗宮崎 忠昭大塚 満洲雄
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1996 年 57 巻 1 号 p. 81-85

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抄録

腹腔鏡下胆嚢摘出術時の落下結石が原因で難治性右横隔膜下膿瘍を形成した本邦最初の症例を報告する.
症例は69歳女性. 1994年2月に近医で腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し,術中に結石が腹腔内に落下した.術直後より右背部痛を自覚した.同年7月下旬より発熱がみられるようになり,抗生剤投与で解熱した. 8月下旬より再び発熱があり,当院内科に入院した.右横隔膜下膿瘍を認め,経皮経肝的膿瘍持続ドレナージを2回行ったが治癒しなかった. 1995年1月30日に右横隔膜下膿瘍のドレナージ手術を行った.大量の膿と最大径1.2cmのビリルビンカルシウム石を9個排出し,膿の細菌培養で大腸菌を認めた.術後経過は順調であった.
落下結石は腹腔内膿瘍の原因となる.腹腔鏡下胆嚢摘出時の大量の落下結石は開腹に移行し回収すべきと考える.わずかな落下結石も出来るだけ腹腔鏡下に回収し,術後経過を観察することが必要と考える.

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