1996 年 57 巻 10 号 p. 2413-2417
妊娠に伴い急速に増大し,悪性化も否定できず治療法の選択に苦慮した再発葉状腫瘍を経験したので報告する.症例は31歳女性で, 1993年9月,左乳腺腫瘍に対し腫瘍摘出術を施行し,病理診断は良性葉状腫瘍であった. 1994年4月,手術創直下に一致して腫瘤を認めたが,増大傾向はなく経過観察していた. 1995年1月,妊娠6週頃より急速に増大傾向を示した.初回手術での取り残しが再発の原因と考え,臨床的に悪性葉状腫瘍と診断し非定型乳房切除術を施行した.病理組織学的には初回と比べ,上皮成分および間質成分ともに細胞密度を増していたが良性葉状腫瘍であった.また,人工妊娠中絶術を同時に施行したが,人工妊娠中絶と葉状腫瘍の予後については今後検討が必要である.