日本臨床外科医学会雑誌
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高齢者(80歳以上)胃癌治療と医療費
戸倉 康之山藤 和夫高橋 哲也愛甲 聡守瀬 善一朝見 淳規林 浩二藤井 俊史服部 裕昭高梨 邦彦大谷 吉秀
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1996 年 57 巻 11 号 p. 2623-2628

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抄録

1991年4月より3年間に228例の胃癌切除術を経験した.これらのうち80歳以上の高齢者胃癌は26例であった.これを他年齢群202例と臨床および医療費面より比較検討した.平均年齢は82.7歳でA領域に多かった.進行度はstage Iが15例(57.7%)をしめた. D2以上のリンパ節郭清は42.3%,胃全摘は26.9%,他臓器合併切除は38.5%であった.リンパ節郭清率と他臓器合併切除率は他年齢群に比べ統計学的に有意に低かった.このように縮小手術が施行されているにも拘わらず術後呼吸器合併症は34.6%と多かった.在院日数と総医療費は他年齢群と比較して不変であったが,入院点数,処置点数の比率はやや高かった.しかし,合併症を引き起こすと存院日数,総点数,なかんずく注射点数,検査点数,処置点数は高値高額となった.早期癌の発見に努力すると共に合理的な縮小手術,内視鏡下手術の導入等により患者のQOLをあげることが必要である.更に病診連携を進めて在院日数の短縮に努める事が医療費の節減をもたらすと考える.

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