日本臨床外科医学会雑誌
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慢性膵炎に対する十二指腸温存膵頭切除術を施行した2例
木村 雅美平田 公一三神 俊彦及川 郁雄向谷 充宏伝野 隆一
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1996 年 57 巻 6 号 p. 1440-1444

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抄録

慢性膵炎に起因する腹痛は,しばしば内科的治療に抵抗を示し,外科治療を要することがある.教室では1990年まで膵頭部に病変の限局した慢性膵炎症例(主として主膵管拡張非著明例)に対し,膵頭十二指腸切除術を適応としてきた.一方, 1980年にBegerらが十二指腸温存膵頭切除術(以下DpPHR)を報告して以来, Begerの手技に工夫を加えたDpPHRが報告されてきた.教室でも膵頭部に限局した慢性膵炎にDpPHRを施行し,良好な成績を得た代表的な2例を報告する.術式としては, Kocher授動術を施行せず,また後上膵十二指腸動脈,胆管を温存し,再建法としてRoux-Y型膵空腸吻合法を行った. 2例目の経験より,合目的的な血管温存が可能であれば, Kocher授動術も許容されるのではないかと示唆された. DpPHRは手技上の論議がなおあるが,消化管の持つ本来の機能をより温存し得る術式として解剖,生理学的に明らかになることが期待される.

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