1996 年 57 巻 6 号 p. 1481-1486
難治性の術後ストレス潰瘍による穿孔性腹膜炎に対し内視鏡下にフィブリン糊を注入し,潰瘍穿孔部が閉鎖し治癒し得た1例を経験したので報告する.症例は47歳,男性.膵体部癌にて膵尾側亜全摘を施行したが,術後9日目に汎発性腹膜炎となり膵断端部縫合不全の診断にて再開腹しドレナージ術を施行した.術後の上部消化管造影にてストレス潰瘍穿孔性腹膜炎と診断され,保存的治療にて潰瘍穿孔部の閉鎖を見ず,腹腔内膿瘍の形成とエンドトキシンの高値が持続するため,内視鏡下にカテーテルを用いて穿孔部をフィブリン糊にて被覆したところ,潰瘍が治癒し軽快退院した.難治性潰瘍の修復に内視鏡によるフィブリン糊の局所的使用は有効と考えられた.