1996 年 57 巻 7 号 p. 1551-1555
腹会陰式直腸切断術(APR)の,高齢者への影響を検討した.最近5年間に当院で根治術を施行した直腸温59例のうち29例・49.2%にAPRを施行した.このうち入院中に脳外科手術を受けた1例を除く28例にっき, 70歳以上の高齢群15例と70歳未満の若年群13例に分け比較した.術前の合併症の平均存在数は,高齢群2.5/若年群1.0(以下高齢群/若年群)であった. Physiological and Operative Severity Score for the enUmeration of Mortality and morbidity (POSSUM)のphysiological scoreは24.3/14.8点, total scoreは41.1/33.5点であった.手術の術式や進行度は両群に差はなかった.術後合併症数は3.5/1.5術後在院日数は66.1/51.7日であった.高齢群を, physiological score 22点で2群に分け検討すると,高値の群では合併症の発生が多く,在院期間が長かった.高齢者で術前合併症を有する症例では,適応および術中術後管理に十分注意する必要があると考えられた.