1996 年 57 巻 8 号 p. 2007-2012
粘液産生膵腫瘍は,特有の内視鏡および膵管像を呈するため,その存在診断は比較的容易である.しかし,管腔内を連続性に表層拡大進展するという病理組織学的特徴があり,進展範囲を術前診断する必要があるが,各種検査を施行しても,進展範囲の術前診断に難渋する症例が多い.今回,術中に膵管鏡を施行し,外科的切離線の決定に有用であった症例を経験したので報告する.
症例は77歳の女性.繰り返す心窩部痛のため精査を受け,膵頭部の主膵管型粘液産生膵腫瘍と診断し,幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した.術中に膵管鏡で残存膵に病変の遺残がなく,切除膵にイクラ状腫瘍を確認した.組織診断は膵管内乳頭線癌であった.