1997 年 58 巻 10 号 p. 2239-2245
粘膜下層浸潤胃癌に対して縮小手術を適応するかどうかを検討するために,浸潤の程度により3つの群に分類した.対象は胃壁深達の程度smと診断され,生死の判明している90例とした.深達度で細分類するとsm1が28.9%, sm2が36.7%, sm3が34,4%であった.リンパ節転移は22.2%が陽性で,深達度が増すにつれ有意に増加し,第2群リンパ節陽性はsm3にのみ認めた.リンパ節転移はリンパ管侵襲陽性率が増加することにより高くなった.逆にsm1で20mm未満,陥凹型,分化型のものはリンパ節転移がなく,縮小手術を適応する可能性が示唆されたが,そのためには術前診断の精度を一層向上させる必要がある.術後生存を検討すると再発死亡は5例,他病死は5例で5生率は88.2%であった.再発死亡例は70歳以上の高齢者が多く,深達度はsm2以降,腫瘍径は40mm以上がhigh riskと考えられ,多発胃癌にも再発が多く,このような症例は術後厳重な観察が必要と考えられる.