日本臨床外科医学会雑誌
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血性心嚢液排出が持続した原発性心膜悪性中皮腫の1例
成瀬 博昭片山 良彦稲田 潔池田 庸子
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1997 年 58 巻 10 号 p. 2295-2298

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抄録

症例は28歳男性で, 1995年10月下旬より全身倦怠,労作時の息切れを自覚し, 11月6日,近医の胸部X線検査で心拡大を指摘され,同日当院入院となった.心嚢ドレナージ術を施行,血性心嚢液の細胞診はclass IIIであった.心膜炎として諸検査・画像診断を行ったが有意な所見はなく,またステロイド・抗結核剤の治療にも反応しなかった. 11月27日,胸腔鏡下に心膜生検・開窓ドレナージ術を施行し,悪性中皮腫が疑われた.血性心嚢液の排出が大量(2,000ml/日以上)かつ持続し,心嚢内にび慢性に増殖する腫瘍陰影が出現したため, 96年1月8日,胸骨正中切開にて手術を施行した.心膜は肥厚し,心外膜に沿ってゼリー様の腫瘍が増殖し,心臓を鎧状に被覆しており切除不能であった.病理組織学的にはepithelial typeの悪性中皮腫であった.化学療法,放射線療法を行い,排液は減少,腫瘍も縮小し一時帰宅可能となったが, 3月より腫瘍は急に増大し,両胸腔内,胸壁への浸潤も認められ4月10日死亡した.心膜腔内病変は画像的に描出が難しく,生前に診断された原発性心膜悪性中皮腫の症例はきわめて少ない.

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