日本臨床外科医学会雑誌
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乳腺腫瘍中心部温度測定の臨床病理学的意義に関する検討
林 剛佐藤 一彦田巻 国義望月 英隆玉熊 正悦西田 正之平出 星夫
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1997 年 58 巻 12 号 p. 2760-2764

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抄録

乳腺の良・悪性腫瘍の内部温度を直接測定し,腫瘍温の臨床的意義を検討した.とくに,悪性腫瘍においては内部温度と臨床病理学的進行度および腫瘍新生血管などの予後因子との関係を検討した.対象は乳腺腫瘍57例(乳癌35例,線維腺腫22例)で,穿刺吸引細胞診施行時超音波ガイド下に先端部に熱電対を封入した21ゲージ針を腫瘍内に刺入して腫瘍内温度を測定,同時に腫瘍直上の皮膚温も測定した.腫瘍新生血管は第8因子関連抗原を用いた免疫染色法により求めた.
結果: 1)腫瘍中心温(平均)は悪性例が有意に高かった(p<0.01). 2)腫瘍径が大きいほど高温傾向がみられた. 3)腫瘍中心温は組織型による差, n・ly・vの有無による差はなかったが病期IIはIより高温の傾向がみられた. 4)腫瘍新生血管密度の高い症例は腫瘍中心温と皮膚温の差が大であった.結論:腫瘍内部温は良性例より悪性が有意に高く,その温度は腫瘍新生血管との密接な関係が示唆された.

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