1997 年 58 巻 12 号 p. 2856-2859
症例は70歳の男性.主訴は嚥下困難. 32歳頃から時々嚥下困難が出現し,約10年前からは症状が増悪した. 1996年3月には食事摂取不能となり,近医にて食道アカラシアと診断され入院した.食道造影検査ではIII度のS状型食道アカラシアであった.内視鏡検査では,上切歯列から25~29cmの2時方向中心に発赤を伴うO-IIc病変を認め,ヨード染色では明らかな不染帯として認められた.生検では, moderately differentiated squamous cell carcinomaであった.表在型食道癌を併発したアカラシアと診断し,食道抜去術を施行した.切除標本では,胸部中部食道の右壁に3.6×2.8cm大のO-IIc病変を認め,深達度はmm3, poorly differentiated squamous cell carcinomaであった.