日本臨床外科医学会雑誌
Online ISSN : 2189-2075
Print ISSN : 0386-9776
ISSN-L : 0386-9776
気胸を伴った巨大気腫性肺嚢胞症の検討
門倉 光隆片岡 大輔山本 滋野中 誠西川 岳男村田 升谷尾 昇井上 恒一
著者情報
ジャーナル フリー

1997 年 58 巻 3 号 p. 519-523

詳細
抄録

過去15年間に当科で入院治療を行った巨大気腫性肺嚢胞症(以下,巨大プラ)38例のうち,巨大ブラ占有側あるいはその対側に気胸を発症して治療の機会を得た症例は19例(50%)で,このうち巨大ブラ占有側の気胸は14例,対側気胸は5例であった.気胸発症は非気胸例に比べ高齢者にやや多い傾向を示したが,喫煙歴ならびに併存疾患と共に,気胸発症との関連性は認められなかった.また,巨大ブラの占有側についても,その左右別と気胸発症との関連性は認めなかったが,肺葉別では中下葉に発生した巨大ブラ9例中6例と高率に気胸を発症した.治療は,対側気胸の5例中4例では,まずこの気胸に対する手術を施行した上で巨大ブラに対する治療を計画した.巨大ブラに対する手術時に,ブラ壁の穿孔が確認できた症例の病理組織学的検索では弾性線維の増生や断裂,さらに炎症細胞浸潤を認め,肺胞構造だけでなく臓側胸膜の脆弱化が気胸を誘発したものと考えられた.

著者関連情報
© 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top