日本臨床外科医学会雑誌
Online ISSN : 2189-2075
Print ISSN : 0386-9776
ISSN-L : 0386-9776
膀胱癌術後9年目に切除しえた転移性肝癌の1例
春田 直樹浅原 利正丸林 誠二福田 康彦土肥 雪彦東 和義
著者情報
ジャーナル フリー

1997 年 58 巻 3 号 p. 654-658

詳細
抄録

今回われわれは膀胱癌に対する膀胱全摘術後9年目に局所再発を伴わない単発の転移性肝癌を発症し,根治的に切除できた症例を経験したので報告する.症例は71歳の男性.腹部CT上の肝異常陰影を主訴に入院.術前の肝生検の病理組織診断は移行上皮癌であり, 62歳時の膀胱癌の転移と診断された.転移性肝癌の原発病巣の多くは消化器疾患であり,このうち外科切除対象症例の多くは結腸・直腸癌が占め,膀胱癌を原発とする転移性肝癌の手術症例の頻度は極めて低い.これは膀胱癌の肝転移が稀なためではなく,肝転移を来した膀胱癌の多くは多発肝転移や他の遠隔臓器転移を合併した症例であり,転移巣切除術の適応となる症例は極めて稀なためである.しかし,本症例の経験より,膀胱癌術後長期にわたる骨盤腔および肝臓を含めた遠隔臓器の検索の重要性を再認識すると共に,早期発見により切除可能な膀胱癌原発肝転移性腫瘍の存在が確認された.

著者関連情報
© 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top