1997 年 58 巻 8 号 p. 1907-1912
難治性皮膚潰瘍のため2年余にわたる局所処置を受けてきた閉塞性動脈硬化症例に対し,遠位部後脛骨動脈バイパス術を施行したところ速やかに潰瘍が縮小治癒した症例を経験したので報告する.症例は56歳男性. 51歳時すでに左下腿切断術を受けていた. 54歳時より右足背および趾間に潰瘍が出現し,処置を施行されるも難治性のため血行再建術を依頼された.血管造影では右膝窩動脈は膝上部で高度狭窄を呈し,膝下部で完全閉塞.側副血行によって後脛骨動脈および腓骨動脈の末梢が造影されていた. in situ大伏在静脈グラフトを用いて膝上部膝窩動脈から遠位部後脛骨動脈までのバイパスを行ったところ,皮膚潰瘍は術後36日目に治癒し患趾切断を免れた.虚血性皮膚潰瘍が難治性の場合, salvage目的での下腿動脈バイパス術は積極的に行われるべきである.