2003 年 55 巻 11 号 p. 15-26
森林の違法伐採問題は、2000年に開催されたG8九州・沖縄サミットで取り上げられてから、急速に国際的な議論が行われるようになった。この背景として、木材生産国では、90年代後半に政治・経済的な混乱によって違法伐採活動が激化したことから、政府が国際社会からの支援を期待して本問題に関する議論に積極的に関わってきたこと、また、先進国では、政府と環境NGOが、持続可能な森林経営に関する議論の停滞の中で、自らが森林問題に取り組んでいることを示すために、問題の所在が明解である違法伐採問題を積極的に取り上げたこと、更に、日本では、業界関係者と政治家が木材の輸入規制を期待して議論の後押しをしたことが考えられる。今後は、異なる期待を抱いた利害関係者がそれぞれ一定のメリットを得られるような形で、合意形成を進めることが重要である。