抄録
昭和26年の京都営林署における旧保管林の譲与処分に関する書類を調査したところ、保管林を設定していた28社寺のうち16社寺が269町歩の譲与申請を行い、11社寺の237町歩に譲与が行われていた。申請は、申請社寺による旧保管林面積の四分の一程度しか行われていなかった。これは、譲与基準の厳しさ若しくは営林署の指導によると考えられる。申請に対しては、多くの社寺が概ね申請通りの譲与を受けており、一部で申請以上の譲与を受けた社寺も見受けられた。これは、「社寺保管林処分審査会」が、基準に適合する箇所であれば、極力譲与する方針で審査を行っていたためと考えられる。5社寺については、申請が却下されていた。これは、昭和25年の「京都国際文化観光都市建設法」を踏まえて、京都市長から林野庁長官に対して、東山及び嵐山周辺の旧保管林については、原則的に国有林として存置するよう意見書が提出されたことによると考えられる。