林業経済
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大規模森林所有者の山林集積と処分過程(原著論文)
群馬県A家を事例として
岡部 保信
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2012 年 64 巻 11 号 p. 1-18

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抄録

本稿の目的は、山林ばかりでなく田畑・宅地も大面積集積した群馬県A家を事例にして、用材林業後進地における「商業・高利貸資本」による大林野所有の形成と第2次世界大戦後の大量山林処分を解明し、「近代の日本の地主制と資本主義の展開」に対応した山林の集積・処分過程を実証分析することである。分析方法は、A家所蔵の第1次資料を主に使用し、第I期~第VI期に分け各期の特徴を分析した。その結果、(1)山林の集積・処分過程を農地等の不動産や有価証券への投資等を含めた地主経営全体の変質と資金循環の中で位置づけ、日本資本主義の展開の中での山林の集積・処分過程を明らかにし、(2)特に大正後期以降のA家は、明治期の「商業・高利貸資本」としての性格規定から三井合名会社等とともに朝鮮経営に進出するなど、地主経営における資金運用のあり方を大きく変化させ、(3)第2次世界大戦後に山林を2,000町歩以上処分、地方自治体等へ寄付したことが明らかになった。

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© 2012 一般財団法人 林業経済研究所
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